同調性・同調性の論文
新型コロナ肺炎の世界的な流行の一つの副産物として明らかになったのは、国や地域によるマスクの着用率の違いでした。何故、日本人は法的規制もないのに、みんなきちんとマスクをするのか。何故、お欧米人はあんなにマスクを嫌がるのか。その違いが生まれる原因の一つとして、人々の同調性(conformity: 集団の規範に従おうとする性質)や集団の同調圧(conformity presser: 規範に従わせようとする圧力)が国や地位によって違っているからだろうという考え方があります。日本人がマスクをするのは同調圧力のためだとする一方的で恣意的な解釈には賛成しませんが、例えば、漁業に規制にはトップダウン的な規制と、ボトムアップ的な規制があり、沿岸の零細漁業にはボトムアップ的な規制が有効であるとされています。その理由は、地域で行われる漁業の場合、同調圧力を利用した相互監視的な規制が、管理コストがかからず有効だからだとされています。つまり、同調性や同調圧力には、社会を安定させる機能があり、過度にならない範囲で同調性や同調圧力を上手に使うことは、安全で効率的な社会を作っていくために必要であり、SDGsの実現のためにも必要なことかもしれません。
マスクの着用が同調圧力のためなのか、適度会同調圧をどの様にコントロールするのかなど、さあざまな議論があり得ますが、こうした議論を科学的に進めるためには、個人の同調性や社会の同調圧を定量的に比較することがまず必要でしょう。
Marine Policy誌に、”Potential signals promoting behavior for coastal conservation: Conformity I small-scale fishing communities in Philippines.(Kazumi Wakita, Hisashi Kurokura, Zaida A. Ochavo, Reiday I Inolino, Hiroshi Fushimi and Satoshi Ishikawa 2022, Marine Policy, vol 146 105392) が掲載されあした。この論文では、近接するフィリピンの沿岸集落の同調圧力が比較されています。同調性の比較に用いた手法は、フィリピンの社会を前提にしてつくられていますが、この手法を改良すれば、地域間で同調圧の強さを比較する手法が開発できると思います。
この論文は、2022年11月18日まで、以下のURLから無料でダウンロードできます。
https://authors.elsevier.com/a/1fqev,714Mn9F4