見た目で魚の鮮度がわかるか?
「見た目で魚の鮮度がわかるか?」という論文が公表された。少し、面白い分析手法を使っている。昔は魚屋に鮮魚が並んでいて、消費者は魚に触ったり、においをかいだりして、売られている魚の鮮度を判断した。今は、スーパーの鮮魚コーナーでは、魚はしっかりとラップに包まれていて、匂いはわからないし、あまりべたべたと触るわけにもいかない。ほとんど、見た目だけで、魚の鮮度を判定しなければならない。また、通信販売では、写真から鮮度の判断をすることになる。そのような状態でも、はたして、消費者は魚の鮮度が判るのだろうかというのが、論文のテーマである。このようなテーマで、やりそうな研究は、新鮮な魚を買ってきて、鮮度を測定しながら写真をとり、消費者を集めて、それらの写真を組み合わせて、鮮度の良い方を選ばせるという方法で、人の視覚的鮮度判断の感度(sensitivity)を測定するという方法だろう。この方法では、実際の購買行動の中で、消費者が視覚的に鮮度を判定できるかという問題には答えられない。売り場には、同じ魚種でも様々に由来の異なる魚が並ぶ、大きさも違えば、産地も違う。成長段階も違う。魚の色や形は、それらの要因によって異なるから、それらが組み合わさった様々な変化の中から、鮮度情報を取り出して判断しなければならない。この研究は、その点について、工夫がある。東京都内の様々な店から買ってきた大き者や値段の異なるアジを、勾配直後に鮮度を測定して、同時に写真を撮って、これらの写真を組み合わせて、3択で鮮度の一番良い魚を、消費者の代表として参加した、被験者に選ばせている。これを、それぞれの被験者に10回繰り返して、鮮度判定の精度を調べる一方で、写真に撮られた、魚の様々な部位の色や、形態の特徴を主成分分析で取り出して、主成分と消費差の選択の相関をみて、消費者がどのような情報から鮮度を判断しているのかを、同時に調べている。結論であるが、鮮度がわかる人はわかるが、わからない人はわからないとい、納得できる結論になっている。こういう調査のやり方を示した論文というのが、この論文の価値であり、消費者選択や消費者に対する情報提供の在り方に関する研究で同様の手法が使われていく可能性がある。
https://www.mdpi.com/2304-8158/13/19/3191/pdf